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Interview — No.004

中西 凌也さん
誰よりも早く現場に入り、
誰よりも遅く帰る。音響という仕事のプライド

株式会社RTT 中西 凌也さん 営業部長 / チーフオペレーター 2026.04

高校時代よりアルバイトで音響の仕事をスタート。その後、音響の専門学校を卒業後に地元のラジオ局に就職。契約社員として地元の音響会社で働いた後に20代前半で上京。現在は東京・横浜を中心に音響業を展開する株式会社RTTに就職し10年以上勤務。ニッチ産業の中で刺激的な経験や、出会いと別れを繰り返すうちに「音響」という仕事にプライドと信念を見出す。

"プロの人たちが集まる場所だけが現場じゃないんです。町内会の集まりから、学園祭から、講演会から、展示会のビジネスのブースから郊外のモールであるアイドルのライブまで、どんな現場でも誰よりも早く現場に入って誰よりも最後に帰る音響という仕事人がいます。"

— 中西 凌也(株式会社RTT)
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Profile

営業部長

チーフオペレーター

高校時代から音響会社でバイトをスタート。専門学校卒業後にラジオ局での就業を経て、東京、神奈川を拠点とする株式会社RTTに就職。業界歴15年以上のたたき上げのプロのオペレーター。

とある日のスケジュール(※リアルな1日)
06:00
起床
07:00
ハイエースに倉庫から荷物を詰む、事務所で軽く朝食、レス返信
09:00
本日のクライアント先に箱入り(ダンスイベント)
11:00
搬入と機材設置が完了、企画者と打ち合わせ
11:30
サウンドチェック〜リハ
13:30
客入れ、BGMを流しながら機材のトラブルないかをさらに徹底的に確認
16:00
本番終了、撤収と挨拶
17:00
駐車場ハイエース内でクライアントの新規案件の電話対応。見積もりを作成。
19:00
桜新町でパンを購入。夕食。リースしていた細かい機材を回収。
20:30
事務所に回収。翌日のためにハイエースの機材を再編集、見積もりの作成、インナーの顧客対応の情報整理
22:00
三茶にて知り合いのクリエイターと会食
24:00
帰宅
権上:今回はお休みの日にありがとうございます。いきなりですが、中西さんはそもそも音響屋さんになろうとおもったきっかけはなんですか?

ここ良い場所ですね。(笑)落ち着きます。
※五反田のテキサスというカフェ。

遡って話すと、はじめて音響の仕事をしたのはアルバイトとして知人経由で高校生時代です。

じつは私は小中高ずっと野球をやっていて、その練習や上下関係とか、とにかく時に辛いときに毎日のように聴いていた大好きなアーティスト(バンド)がいたんです。

普通はここで楽器をはじめたりするんだと思うんですが、なんとなく自分が音楽をするのは違うなと感じて裏方の音響さんに興味を持ちました。

きっと深層心理ではそのバンドに自分がなるのは無理かもしれない。だけど、そのバンドと音響として仕事するのは自分でも可能性が0.1%くらいはあるなと感じたんです。(笑)

その後、音響の専門学校に入るんですが、あまり恥ずかしくてその夢は言えなかったんです。

中西凌也さんインタビュー画像1
権上:素敵なきっかけですね。その気持ち、私もよくわかります。自分がフロントに立てる人間じゃ無いという、自己評価の低さ、でもそこに触れていたいという思い。多くの日本人が共感することだと思います。

じつはそのアーティストの音響をするという夢が叶ったんです。20年くらいかけて。(笑)
そう考えると、なりたかった音響屋さんという職業になれて、自分が学生時代にずっと聴いていたアーティストさんとお仕事で関われて、自分は幸せかもしれません。

権上:すごいです!夢叶えてますね。個人的には中西さんのファンになりそうです。笑。ラジオの現場から音響会社に就職しなおした経緯を詳しく教えてもらえますか?

音響の専門学校卒業後に最初は流れと言いますか、なんとなく地元に残る気持ちでラジオ局に就職したんです。いわゆるラジオの制作会社です。例えばキー局のテレビ局も実際は多くの番組を制作会社が共同で作っていますが、それのラジオ版だと思ってください。

それで、毎日いろんな仕事をしてたんですが、ある日ラジオの「公開収録」があったんです。

その日は、アーティストや芸人さんなど、ステージにいて、お客様さんが生放送で配信されるラジオを生で笑いながら聴いていて、その後ろにはPA(音響)さんがいて。

僕はさらに後ろのブースの中、バックヤードでお仕事をしていました。

その仕事の最中にふと、いままでモヤモヤと感じていた違和感に気づいた瞬間がありました。

それはまさに今見ている公開収録の現場。その全体の光景でした。ステージ上にいる演者さん、それをステージの後ろからリアルタイムで支える音響さん。お客様さんの笑顔。

その光景を僕はさらに後ろからガラスブース越しに録音の調整をします。

この一枚の薄いはずのブースは僕の心の中ではとんでもなく大きな柱のような、そんな違和感だったんです。

ブースから眺めた時に「自分の居場所はここではない」と音響会社への就職を決意したんです。

その後、高校時代に働いていた音響会社で働きながら上京する資金をためて、翌年に東京に上京しました。

ちょうど仲間というか、友人や先輩方が東京に出て行ったのも重なって、東京の音響会社に入ろうと必然的に行動してました。

権上:ありがとうございます。トーキョーリックスのインタビューということで、上京後に住まれたのはどのあたりだったんですか?また就職してみてどうでしたか?

街ですか。笑。東京かどうかは怪しいですが、最初は先輩のすすめで東横線の「新丸子駅」から徒歩数分のワンルームに住みました。

武蔵小杉の隣駅なんですが、電車移動前提で考えると何をするにも便利な場所でした。また武蔵小杉自体が当時第2次再開発中みたいな時期だったので、住んでる間にどんどん便利になりましたね。忙しくてミニストップか中華屋しか行ってませんけど(笑)

あとじつは僕はあまりお金持ちじゃなくて、上京した当時は親の支援もなく、専門学校の奨学金の返済もかかえていたので保証会社をつけて家をかりました。

そんな状況で今の家賃相場で考えると訳のわからない選択かもしれませんが、結果として最初に埼玉や千葉の郊外ではなくてすぐに都心に出られるエリアに住んだのは今思うと良かったかもしれません。

就職に関しては意外とスムーズに出来ました。当時まだ小さいRTTに入社して、トイレ掃除から始まって色んな業務を一生懸命にしました。今ではもう10年以上在籍しています。いつのまにか仲間も増えました。

そして、こんな僕を拾ってくれた社長には実は心から感謝しています。僕からするとある意味で家族のような存在ですね。ずっと同じ会社でいつのまにか僕もシニア扱いというか、もうおじさんで、たまに言い争いもしますが(笑)

結果として、チーフオペレーター、営業部長として、現場とクライアントのフロント対応をしています。やっぱり現場もお客さんとの会話も楽しいので、丁寧に仕事を続けていこうと考えています。

"毎日勉強させていただく立場だと考えて全社員で一生懸命対応させていただきます。「この会社は日本一、クライアントさんから直接 ありがとう を言われる会社だよ!」そうやって新入社員の方に堂々と言える。そんな会社にして大きくしていきたいです。"

権上:いや、なんかすごいですね。音響というニッチ産業であり、プロフェッショナルしかいない。そんなイメージの音響業界ですが、中西さんの人柄や話し方からは普遍的な優しさや気遣いが伝わってきます。先程から切り返しも、自分を卑下するような、下手(したて)にでるキャラクター性も、もしかすると中西さんが既存クライアントさんから信頼される部分なのかもしれませんね。笑

ありがとうございます。僕はザコキャラなんですよ。笑。何をするのも怖いんです。

先輩たちと飲んでる時や遊んだりすると気が強くなってくんですが。笑。

でもクライアントさまにももしかしたらこういったザコキャラ感が伝わってるのかもしれません。

だからこそ電話が直通でかかってきて、「これできますか?」と言われた時は初期対応として速攻で見積もりを作ってメールする。これを意識しています。

権上:株式会社RTTさんを調べさせて頂いたところSEOも力をいれてらっしゃいますね。また、「年間700案件の実績」を数字でAIOに反映させられてるのは私たち専門分野からするとかなり基礎的なSEOをやってこられたんだなと感じました。営業部長として中西さんもマーケティングや営業戦略に参加されてるのですか?

ありがとうございます。僕は参加してなくて基本はうちの社長が指揮をとって、外注のSEO業種さんにお任せしています。ただSEO流入でのリードは業界全体に言えることですが、年々下がっていくと思うので次の営業戦略を考えなければいけないと社内全体で動いています。SEOだけでなくAIOやLLMO、またトーキョーリックスさんが推してるAEOの考え方も勉強させてもらってます(笑)

あとはYouTubeやブログなどのコンテンツマーケとかmeta広告は考えていますね。社長案ですが。

僕自身はそういったインサイトマーケティング部分ももちろん社内全体で取り組むべきだと思いながらも、RTTとしては中規模案件の拡大と、リード獲得後の初期対応を丁寧にスピーディーに行うことや、既存のお客様により良い環境の音響下で満足してもらえるよつに目先の案件を丁寧に一個一個やっていくことを大切に考えています。

中西凌也さんインタビュー画像2
権上:それは素晴らしいお考えです。うちもAIOやLLMOの専門業者としてよく試行錯誤しているんですが、結局AIにしても、新しいインサイトマーケのアプローチは中西さんが仰る通りで、既存の現場レベルの営業の徹底がセットなんですよね。でないと、時代的に流入はどんどん下がりますし。

はい。最近、僕も仕事の後にたくさん事業を伸ばすために勉強しています。

でもやはり現場レベルで僕らみたいな業者は結局はヒトなんだなと感じています。意外と音響業界はヒトに仕事がくるんですよね。これは先輩もいってました。僕自身も肌感覚で感じているし、YouTubeとかのコンテンツマーケティングが「潜在顧客への一押し」みたいな使い方になってるなと、現場で「動画見たよ」と声かけられるたびに感じます。

逆にアドバイスとかないですか笑。教えてください!

権上:まずmeta広告は現在進行形ではかなりコスパよいと思うのでやってみるのはありかもですね。中途半端に色んなWEB施策を外注するよりしっかりしたWEBクリエイティブをターゲットに向けて作ってmeta広告回すのはトレンドです。その上でYouTubeとかブログをきちんとターゲットに向けて役立つ情報をなるべく網羅的に発信するのがベターですよね。

ありがとうございます。

トーキョーリックスのむにたさんは長い付き合いなんですが、似たようなことおっしゃってました!

結局、僕らみたいな事業の場合も決裁権をもっている担当者さまがInstagramやfacebook世代ということ。あとは結局僕たちのような非店舗型の事業でも「競合がいるかぎり商圏は多かれ少なかれ存在する」で話をききました。なるほどと思いました。

僕の現場の肌感でも、音響業界自体が独立する人が多く、小さい事業者様も多いです。うちは業界内では大手ではないけど実績が多くそれなりの規模ですが、結局は商圏の中でいろんな事業者と案件の取り合いだったり、発注いただく方から相見積もりで潰し合う構造は起こりうる。自分たちのコンテンツをしっかりと作ったらmeta広告はやるべきかもですね。

なんか広告エリアを指定できるとか教えてもらいました。勉強になります。

あとはあれです。教えてもらいました。なんでしたっけ。J START MAP!!あれ面白いですね。

権上:中西さん。すごく詳しいですね(笑)さすが営業をされているだけありますね。あれは総務省統計局が公式で出しているツールです。私はもともと厚生労働省の労働局出身ですが、あのツールは知ってました。とても良いですよ。SNSマーケティングの中途半端なツール使うよりよっぽど役に立ちます。

今度教えてくださいよ!(笑)

いま僕らは会社としては既存のお客様をなによりも大切にして満足度を上げること、そして中規模案件の数を増やすことを目標にして動いています。

当たり前ですがその価格帯は同業種ではレッドオーシャンなので転多くの業者さまが苦労するところですが、僕たちはそれを凌ぐ実績と経験、あとは「RTTに頼めば」「中西に電話すれば」なんとかしてくれる。

そんなポジションを泥臭く狙っていきたいです。一番はリピートだと思いますので。また現在徹底的な料金体制の透明化を目指しています。

うちは社長もそうなんですが、変わってる人はいてもズルい人がいないんです。どこの音響事業者よりもクライアントさまが気持ちよく取引ができることを大切に考えています。

音響業界は「初期対応が遅い」「見積もりが不透明でよくわからない」「コミュ力が低くてレスが遅い」そんなイメージがあるとトーキョーリックスさんが調査をする過程で聞きました。また中規模の案件を増やしていく構造的な難しさも知りました。痛いほどわかるんですよね(笑)

ですがRTTはその全てを凡事徹底ですでに対策しています。またこれからも最優先で営業部長として責任持って課題がでたら解決します。

まず初期対応に関して。こちらは既存クライアントさまも含まれますがうちにはもともと現場に出ていた社員の方でいまはお子さんが生まれて電話などのオペレーションを担当してくださってる人がいます。

彼女がいることで初期対応で電話が通じないなどが非常に少なく、どこの音響業者よりも丁寧に、値段などなるべくお客様が聞きたい答えを早く返信できる体制を作っています。

見積もりに関しては、どこにも負けない透明化を宣言しています。時期によって多少の機材の値段の変化などはありますが、基本的には安心価格です。

また見積書が急に上がったりはしません。ご安心ください!

権上:素晴らしいですね。営業的にリード獲得を増やすではなく確実にお問い合わせに対応するのは信頼されますよね。

はい!例えばクライアントが制作会社だとします。
クライアントの担当者さま、当日の会場、私たち、3つの組織が絡むイベントの場合、RTTとしては最初のヒアリング終わり次第、機材のチェックを行います。

その過程で当日機材面などで怪しい部分は必ず事前に会場にこちらから問い合わせてスピーカーなどの確認をします。もしトラブル可能性を発見したら即クライアントさまに代案を提案します。

なので、本番に突然値段が変わるなんてことはありません。事前準備や各方面へのヒアリングを徹底するのも営業活動であって僕らの仕事です。

とりあえずなにか音響が必要な場面があれば中西に電話ください。(笑)

ひとまず全部調べますし、それで契約にならなくても問題ありません。

権上:やはりお話を聞くうちにだんだんと中西さんの仕事に対する熱量や勉強熱心な部分が見えてきてこちらもインタビューしがいがありました。最後に何か音響という仕事についてひとことお願いします。

僕は結局は一緒に働いてくれる仲間、最近また増えたんですが、後輩たちのモチベーション管理がとても大切だと感じています。

僕もまだまだ未熟なのでみんなに迷惑かけますが、それでもこの160cmの小さな身体でしっかり背中をみせれるように日々精進です。笑

中西凌也さんインタビュー画像4
Interviewer's Note 権上 裕介(TOKYO LICKS 主宰)

今回、中西さんとお話しして最も印象に残ったのは、こちらを笑かせるために度々出てくる「ぼくザコキャラなんですよ」という言葉でした。身長160cmと笑いながら言う。しかしその同じ人物が、高校時代から抱いていた「あのバンドの音響に携わりたい」という夢を、20年という時間をかけて静かに叶えているのです。

こちらの質問へ対する立ち振る舞いから受け答えまで、長年の現場での振る舞いと積み上げた実績が「言葉の代わりに雰囲気で」仕事への熱量を語ってしまうタイプ。中西さんは明確にそのような方でした。自己開示の仕方が非常に自然体で、話を聞いているうちにこちらが自然と信頼していくのが分かりました。これは計算ではなく、積み重ねてきた現場経験から滲み出るものだと思います。

音響という仕事は、基本的に「うまくいくほど気づかれない」仕事です。音が完璧な現場ほど、観客はPA(音響)の存在に気づかない。それでも誰よりも早く現場に入り、誰よりも遅く帰る。支えることそのものを仕事の誇りとして内面化している人間だけが、長くその仕事を続けていける。私はもともと厚生労働省の労働局に勤務していました。官公庁の仕事の本質も「誰かを支える」ことです。主役は常にサービスを受ける側の人間であり、自分たちは見えない場所で機能している。中西さんの話を聞きながら、そのときの感覚を久しぶりに思い出しました。

また、マーケティングや営業の話になったとき、中西さんが「現場レベルで丁寧にやることが先」と語った部分が非常に刺さりました。私自身がAIOやLLMOなどのデジタルマーケティングに携わる中で、同じ結論に何度も辿り着くからです。流入を増やしても、現場のサービス品質が伴わなければ何の意味もない。どんな時代でも、この順番は変わらないと思っています。

最後に、RTTという会社について。「変わってる人はいてもズルい人がいない」という表現が、年間取引700案件にも及ぶ会社の文化や歴史をそのまま表していると感じました。一緒に仕事がしたいと思える人間がいる場所には、自然と仕事が集まっていく。中西さんを通じてRTTが体現しているのは、まさにその原則だと思います。音響業界が「ヒトに仕事がくる業界」である以上、中西さんのような人が顔になっているRTTは、これからも着実に案件を積み上げていくでしょう。私もそろそろTOKYOLICKSでオープンイベントを開きたいと考えているので中西さんにご連絡しようと考えています。

取材・原文 / 権上 裕介(TOKYO LICKS 主宰)