大岡 彩乃 — ダンサー・振付師・動画編集者・ライター

Interview — No.001

ハロプロから坂道まで、
裏で支えるダンサー。
「主役は、いつも相手でいい」
そんな働き方を見つけてきた。

大岡 彩乃 ダンサー・振付師 / 動画編集者・ライター 2026.03

幼少期からダンスを続け、アイドルグループの現場を裏から支えながら、振付師・ダンス講師として活動してきた彩乃さん。しかしキャリアの中でずっと感じていたのは、「自分が前に出たいわけじゃない」という感覚。コロナ禍を機に動画編集と記事ライティングをキャリアに加え、現在は広島を拠点にフリーランスとして複数の案件を担当する。「引き立てることの方が好き」と言い切る、その働き方の哲学について聞いた。

"ダンスはツールでした。それを通じて誰かが輝いていく。その瞬間を見ることの方が、私にはずっと大事だったんです"

— 彩乃
大岡 彩乃 プロフィール写真

Profile

ダンサー・振付師

ライター・動画編集者

広島県出身。幼少期よりタップダンスを始め、バレエ・ジャズ・ヒップホップなど複数ジャンルを習得。高校時代にアクターズスクール広島へ入校後、上京。乃木坂46・アンジュルム(ハロプロ)のスタンドインを経験するほか、地下アイドルやアーティストへの振付提供、ダンス講師として活動。並行して動画編集者としてのキャリアを確立し、現在は広島を拠点にフリーランスとして稼働中。社会保険労務士の資格取得を目指しながら、将来的なダンススタジオ経営を見据えている。

とある日のスケジュール
08:00
起床・社労士のテキストで学習
10:00
ライティング案件の作業
13:00
昼食・動画や記事でインプット
14:30
動画編集または振付の準備作業
18:00
夕食・自由時間
21:00
就寝前の学習タイム
「勉強とスタジオ準備のために、今は意図的にペースをコントロールしています。時間に余白がないと、人に何かを提供する質が下がると思っているので」

この仕事を始めたきっかけは何ですか?

ダンス一本でやっていこうと思っていたのですが、コロナ禍で状況が一変しました。ダンスに関わる仕事がほぼすべてなくなったときに、「ダンスだけに依存していてはいけない」と気づいて。その頃にライティングの仕事を始め、その後、映像制作の知人から声をかけていただいたことで動画編集もキャリアに加わりました。

でも振り返ると、もともとダンス一本でやりたかった理由の根っこは「人の役に立てる仕事がしたい」だったんだと思います。ライティングも動画編集も、誰かのために何かを作る仕事という意味では同じです。スキルは増えましたが、やりたいことは最初からブレていなかった気がしています。

ダンスの仕事で印象的だったものを教えてください

スタンドインという仕事は面白かったですね。乃木坂46さんやアンジュルム(ハロプロ)さんのリハーサルで、本人が到着するまでの間、カメラ位置や照明の確認を代わりに行う仕事です。

急な変更にも即対応できる、プロとしての身体の使い方が求められる現場でした。「ここ全員左スタートで」「このタイミングを半拍ずらして」そういった指示をリアルタイムで体現できるのは、ダンスを長年やってきた蓄積があるからこそだと思っています。本番で輝くのはアーティスト本人。でも、その輝きを支える側にいることに、自分はとても向いていると感じています。

大岡 彩乃 — スタジオでのレッスン風景
スタジオでのレッスンの様子。週8コマ分の振り付けを制作していた時期もあった

「引き立てる」ことへのこだわりはどこから来ているんでしょう

もともと、学校の先生になりたかったんです。高校生まで本気でそう思っていました。誰かに教えて、その人が「できた」という瞬間を見ることが好きだったんだと思います。

アクターズスクールに入ったころ、歌はなかなか評価されなかったけど、ダンスだけは「センターで踊って」と言ってもらえることが増えて。自分の強みがダンスにあると気づいたとき、「じゃあダンスを通じて、誰かの力になれる仕事をしよう」という気持ちになりました。振付師として生徒が輝く瞬間、アーティストの振りを整えたことで本番が決まる瞬間。ずっとそういう場面が好きでした。

ライティングも動画編集も、同じです。誰かの言葉を届けること、誰かのストーリーを映像にすること。そこに自分は喜びを感じています。「主役は相手」であることが、私の仕事の軸になっています。

具体的にどんな仕事を受けていますか?

振付は、アーティストのソロ曲への振付提供や、ダンスインストラクターとしての指導が中心です。ジャンルを問わず対応できることと、ハンドマイクを持つアーティストに合わせた「引き算の振付」歌いながらでも無理なく、かつ見栄えがする動きに調整する作業が得意です。

ライティングは、ウェブメディアの記事制作や取材記事の執筆を担当しています。ダンス・エンタメ領域の知識があるぶん、専門的な内容でも書き手として入り込みやすいのが強みです。

動画編集は、Adobe PremiereとFinal Cut Proどちらも使えます。撮影から台本・構成の段階から関わることもできます。ダンスやパフォーマンス系のコンテンツは、特に動きの見せ方に細かくこだわれます。

3つのスキルが重なる領域たとえばダンスコンテンツのSNS運用代行や、アーティスト・スタジオ向けのPR動画制作なども対応可能です。

一番しんどかった時期について教えてください

ダンススタジオの経営側との方針のズレが大きくなっていったときです。生徒のことは好きで、現場でやりたいことはある。でも、組織の判断と合わなくなっていって。私自身が経理も担当していたのでビジネスの視点がないわけではないけれど、それでも折り合えなくなる瞬間はありました。

広島に戻るタイミングが重なったこともあり、その時期に辞めることを決めました。辛くても残り続けている先生方を本当に尊敬しています。自分は、いくつかの条件が重なってその選択ができた。そういう意味では、恵まれていたと思っています。

大岡 彩乃 — フリーランスとしての作業環境

彩乃さんにとって「仕事」とは

誰かが輝く瞬間に、
そっと関わり続けること。

これからの夢や展望を聞かせてください

数年以内に、自分のダンススタジオを持ちたいと思っています。ただ「踊るだけのスタジオ」にはしたくない。スタッフを雇ったときにちゃんと守れる経営者でいたいし、自分が踊れなくなったあとも続けられる場所にしたい。そのために今、社会保険労務士の資格取得を目指して勉強中です。

ダンス業界って、雇用保険や労務管理の知識がなくて損をしている人が多いんです。「知っていれば言い返せたのに」という経験が、自分にもあって。スタジオ経営のためだけじゃなく、業界全体に少しでも還元できることがあればと思っています。

彩乃さんの History
幼少期 Childhood
タップダンスを地元の公民館でスタート
小〜高校 School Days
バレエ・ジャズ・ヒップホップなど複数ジャンルを習得
高校生 High School
アクターズスクール広島に入校。ダンス一本でのキャリアを決意
20代前半 Early 20s
上京。乃木坂46・ハロプロのスタンドイン、アーティストへの振付提供、紅白歌合戦出演など多様な現場を経験
コロナ禍 2020–2021
ライティングを開始。継続案件として月150時間規模に成長
その後 Afterward
映像制作の知人から動画編集の仕事もスタート
2025 Move to Hiroshima
広島へ移住。フリーランスとして稼働しながら社労士の勉強を開始
Interviewer's Note 権上 裕介(TOKYO≠LICKS 主宰)

今回、彩乃さんのお話を伺って強く印象に残ったのは、幼少期から向き合っているダンスを「見せるための技術」だけでなく、「人とつながるため、支えるための手段」として捉えている点でした。

イリュージョン、スタンドイン、振付、講師、そしてライティングと動画編集まで、表面的には領域が分かれて見えますが、根底には常に"誰かのために整える"、そして"人の魅力を引き出す"という姿勢が通っています。また、これらの仕事に一貫しているのは全て「スキルや状況のキャッチアップの速さ」が必要だということです。これは汎用的な能力というより、ある意味で後天的に身に付けるスキルであり、なにより勉強熱心でないと継続が不可能な領域です。それを当たり前に捉えている彩乃さんには、インタビューを通じてとても驚かされました。努力をして、挑戦して、成果の答え合わせをする。それを何度も繰り返してきたのだと感じました。率直に素晴らしいと思います。

思えば、私の周りには異業種の壁を信じられないスピードで駆け抜けて結果を出していく人が数人います。彼ら彼女らの共通点は、地頭が良い、領域を選ばない実績を持っている、キャッチアップがはやい、などのスペック面はもちろんですが、何より「ビジネスリテラシー×得意領域の施策があるため、事象に対する解像度や要件整理のレベルが高く、"顧客が本質的に何を求めているか"の当て感が良いタイプ」または「そもそも自身のことをフラットに構えており無駄なプライドがない。ゆえに自分が社会と自分が接続されていることが自然体である」このいずれかの才能があるということです。

彩乃さんの話からは後者の才能をひしひしと感じました。常に丁寧で、優しく、相手の立場に立ってコミュニケーションが進んでいき、インタビューを進めると、それを彼女自身の行動と結果が物語っていました。正直、自分にない部分であり、非常に羨ましく感じました。私たちが理想としている「自信と謙虚さが50:50」な人という印象です。これは運営スタッフともよく話すのですが、仕事のスキルを上げていく上で最強な状態だと感じます。非常に羨ましい限りです。

例えば、彼女の言葉の全ては「表現の世界にいる人やその顧客」だけに向けたものではありませんでした。これだけでクライアントワークの経験を感じます。自分のスキルや経験をどう社会につなぐのか、どうビジネスにつなぐか。仕事と人間関係をどう両立させるのか。そうした問いに向き合っているように感じました。

また制作会社での動画案件に携わっていた過去があり、ビジネスとして実戦で動画編集を学んでいたこと、ダンス講師としての実績も、発注側からするとビジネスコミュニケーションの面で非常に安心できます。「動画編集できる人いませんか?」という発注は市場に溢れている状況です。しかしそこには「コミュニケーションスムーズな方で」が裏に付いて回ります。ビジネスにおけるスキルとは「できる」と「理解できる」が両立した状態です。きっとそんな仕事もできる人だろうなと感じました。個人的には、この文章はインタビュー後に正式な記事作成に入る前に書いていますが、なんだか自分の人生を生きる上でヒントをくれるインタビューだったと思います。

取材・原文 / 権上 裕介(TOKYO≠LICKS 主宰)